Dolores Mary Eileen O'Riordan

 

 

 

 

 

 

全ては

君が去ってしまった後で

 

 

それから

最後に

もう一度だけ

君の事を想う

 

 

 

 

 

週末の朝になると

僕達は

そっとベッドを抜け出した

そして

街外れの森の中にある小さな池まで

息を切らしながら急いで駆けていった

その辺りには

赤いクランベリーがなっている

そこは

二人だけの秘密の場所

まだ誰にも知られていない

そんな場所だった

 

 

僕達は

夢中になってクランベリーを摘み

やがて

お昼近くになると

草の上に綺麗な青いブランケットを広げた

綺麗に編み上げられたバスケットから

新鮮なサンドイッチと温かい珈琲を取り出す

二人で並んで座り

無言のままそれらを食べ終わると

僕達は服を全て脱ぎ

そのまま性行為に耽った

いつもと見える景色が違うからなのだろうか

君はペニスがヴァギナに出入りする様子を

僕に見せつけるようにして

いつもよりも大胆に僕の上で自ら腰を動かした

陶酔感に耽るその口元から

卑猥な言葉を次々に吐きながら

そして

疲れ果てた僕達は

全裸のまま束の間の眠りにつく

真新しいラジオからは

The PretendersのKidが流れていた

その歌声に目を覚ますと

僕達は実に名残惜しそうに

その場所を離れた

そう

あの頃の僕達は子供だった

こんな出来事が永遠に続いていく

なんて事を本気で思っていたくらいには

 

 

 

 

 

全ては

君が消えてしまった後で

 


それから

最後に

もう一度だけ

君の事を想う

 

 

 

 

 

街を出る汽車の列に並んでいる君を見かけた

僕の知らない男性と名残惜しそうに

この街の景色を眺めていた

僕はいつまでも

名残惜しそうに君の事を見た

そして

僕は逃げるようにその場から走り去る

それから

再びあの場所を目指した

 

 

 

 

 

全ては

君が逝ってしまった後で

 

 

それから

最後に

もう一度だけ

君の事を想う

 

 

 

 

 

週末の朝になると

僕は

そっとベッドを抜け出した

そして

街外れの森の中にある小さな池まで

息を切らしながら急いで駆けていった

その辺りには

赤いクランベリーがなっている

そこは

僕だけの秘密の場所

そして

君にとってもそれは同じ

そんな場所だった

 

 

僕は夢中になってクランベリーを摘み

やがて

お昼近くになると

草の上に薄汚いない青いブランケットを広げた

色褪せ壊れかけたバスケットから

カビの生えたサンドイッチと冷たい珈琲を取り出す

そして

無言のままそれらを食べ終わると

僕は服を全て脱ぎ

卑猥な言葉を吐く君を思い出しながら

自慰行為に耽った

そして

疲れ果てた僕は

全裸のまま束の間の眠りにつく

古いラジオからは

The PretendersのKidが流れていた

その歌声に目を覚ましたが

僕はその場所を

いつまでもいつまでも

離れる事が出来なかった

そう

僕はすっかり大人になっていた

こんな出来事が永遠に続くはずもない

という事を理解していたくらいには

 

 

 

 

 

 

そしてそのまま

 


そしてそのまま

隣に居る君はもう

一生目を覚ます事はないのだと悟った

 

こんなに苦しいのならば

愛しい君を

美しい姿のままの

そんな君を

食べてしまいたいと思った

それなら

クランベリーをジャムにして

君の身体に塗ってからがいい

 


まずは

君の青白い顔にそれを塗って

舌で舐め上げた

すると

甘酸っぱい香りが口の中一杯に広がる

 


次に

君の薄めの陰毛に

それから

形の良い、小ぶりの乳房にも

そして

可愛いらしい乳首を

口に含んだ

 


痛いくらいに勃起したペニスを

ジャムまみれのヴァギナに挿入しながら

すっかり白く冷たくなった君の身体を

鎖骨の軋む音が聞こえるくらい

強く抱きしめた

 


私はすぐに射精してしまった

大量の白濁した精液が

赤いジャムと混ざり合いながら

君のヴァギナから滴り落ちる様を

朝が来るまでずっと眺めていた

 


それはそれで幸せだったんだと思う

そう思うと少しだけ名残惜しいと感じ

そう感じたのと同じくらい

少しの涙が頬を伝った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街を出る汽車の列に並んでいる君を見かけた

私の知らない男性と名残惜しそうに

この街の景色を眺めている

私はいつまでも

名残惜しそうに君の事を見る

そして

私は逃げるようにその場から走り去った

それから

行くあても無く

この繊細なガラス細工のような街で

ただただ

途方に暮れていた

 

 

 

 

 

全ては

君が去ってしまった後で


そして

 

どんなものでも

君の存在には敵いはしないのだと

 

それに気がついた私は

遠い日々の出来事と

赤いクランベリーを摘む

君の姿を想った

 

 

 

 

 

 

 

ドロレス・オリオーダンに捧ぐ

Steve Clark

 

 


鼓動

 

心臓には今でも

何かに噛みつかれたような跡が

深くはっきりと残っており

その腐りかけの

グロテスクな傷口の痛みだけが

今でも尚

君の事を思い出させた

 

その傷口から

次々と生み落とされる

得体の知れない快楽と苦痛

制御する事の出来ない

それらはまるで

屍に群がる無数の醜い蟲のように

僕の内側で育ち

蠢いていた

 

 

 

僕が

愛について

語る資格など無い

 

勿論

君にも

その資格は無い

 

僕は

愛について

何も知らない

 

勿論

君も

恐らく

何も知らない

 

あれから

随分と月日が流れた

けれど

相変わらず

僕にはその資格が無い

果たして

君にはあるだろうか

 

 

 

 

 

1月

 

君が姿を消したのは

僕の内側で蠢いてた沢山の蟲達が

いつの間にか

美しい羽を生やし

真冬の空へ向かって

いっせいに飛び立って行った頃

 

全て忘れ去られてしまうのだろうか

思い出なんてものは

きっとそのうち浄化される

ましてや

君の顔、声色、美しい裸体

それさえも

全て

 

 

 

僕はただ

苛立った

君の視線の冷たさに

君の素肌の温もりに

 

君はただ

嘆いた

手に入れる為には

捨てねばならぬ事を

 

僕はずっと

覗いていた

君の内側にある

闇の世界を

子宮から外の世界を

 

君はずっと

探していた

名前も知らない鳥達を

僕以外の誰かを

 

それでも僕は

あの時

確かに君の事を

 

愛は噛み付くのよ

とても

ヒステリックに

 

そう言っていた

君の事を

 

 

 

 

 

あの頃の僕らは

あまりにも弱く

そして

脆かった

 

それを

隠すかのように

僕らは会うたびに

SEXをしたのだけれど

それは

君にとって

少しの心の平穏と

安らぎを

与える事が出来ただろうか

 

 

 

 

 

愛とは

噛みつくもの

とてもヒステリックに

 

それはドラッグにも似た

快楽と苦痛を

与えてくれると言う

 

愛とは

噛みつくもの

とてもヒステリックに

 

それは秘密ではない

理解するものではなく

感じるもの

 

 

 

 

いつか

傷が癒えたのなら

部屋の隅に花でも飾ろうか

誰かの為ではなく

今度は

自分の為に

 

そして

 

真冬の空に飛び立って行った

醜い蟲達の為に

 

美しい羽を生やした

醜い蟲達の為に

 

 

 

 

 

ティーブ・クラークに捧ぐ

Merry Christmas , Mr.Lawrence 2

 

 

 

 

全く

どうかしてるぜ

 

クリスマスだと言うのに

俺には予定が何も無い

 

女房も恋人も全員

俺の元から去って行った

しまいには

『あんたと別れて本当によかったわ』

なんて捨て台詞を吐かれる始末

人を虫でも見るかのような目をしながら

そんな事を言ってたっけ

きっと

俺の事が

転がり落ちそうになりながらも

愛の絶壁に必死でしがみついている

蠅か何かに見えたのだろうかね

兎に角

非情で冷酷な目付きだった事を

鮮明に覚えている

 

 


それにしても

今夜は月が明るい

 

 


まぁ

こんな甲斐性無しの俺だから

それは当然の事だと

分かってはいるのだが

だからと言って

近頃の街の浮かれ具合には

反吐が出る

 

窓から見下ろした

すっかり冬支度をした街は

月明かりのせいか

冷たい空気のせいか

それは知らないが

いつも以上にネオンが輝いて見え

それに辟易した俺は乱暴に煙草を揉み消した

灰皿には吸い殻が山のように溜まっているが

そんな事は今となっては

取るに足りない

些細な事だろう

 

でもこうして

バーボンを持ち込んで

バスタブに浸かりながら

一服を決めていられれば

それはそれで幸せだってもんだ

曇ったガラスには

窶れた年寄りが映っているが

顔に刻まれた深い皺には

年相応の年季なんてものは感じられない

やれやれだ

そんな如何ともし難い事実に

思わず目を背けた

 

 

 

それにしても

こうしてゆっくりと風呂に浸かるのは

どれくらいぶりだろうか

きっとあの

綺麗な赤い髪をした女と

風呂場で乱暴なセックスをして以来だろうか

壁に手を付かせて

後から思いっきり突いてやったら

涎を垂らしながら白目を剥いてたっけ

 

にしては随分と

昔の出来事のように感じるが

だが

例えるのならば

あの女はいつだって才能を発揮した

俺をイラつかせる事においては

まさに天才と言うしかなかった

いや

発明家と言った方が相応しい

そんな女だった

 

 

 

そう言えば

さっきから猫の姿が見えない

きっと奴も俺の不甲斐無さに

呆れて出て行ったのかも

そして

何処かの裏路地で

世界の終わりについて

語っているのかも

 

 

 

そうそう

この時期になるといつも

ある男の事を思い出す

 

小柄で短髪のあの男

名前だけがいつも思い出せないまま

 

ただ

奴の言った事は

はっきりと覚えている

 

メリークリスマス

メリークリスマス

ミスター 『・・・』

 

あの時の

何とも言えない

表情が

 

泣きそうになっているのか

笑いを堪えているのか

そんな

何とも言えない表情が

 

俺は大好きだったんだ

それに

名前を呼んでくれた事が

何よりも嬉しいと感じたんだ

 

 

 

あぁ

俺は再び

あの時みたいな黒い蠅となって

愛の絶壁に

必死で

しがみつこうとしている

 

 

 

そんな夢を見ていた

 

 

 

 

 

バーボンはすっかり空となり

俺はバスタブの水の

さらに奥底へと

ゆっくりとゆっくりと

沈んでゆく

 

そして

 

この世の物とは思えない程の

完璧な静寂と言うものに包まれる

何処からか一瞬

羽音が聞こえたが

多分、気のせいだろう

そして

弱々しく鼓動する心臓の音だけを

ただただ

聞いている

 

 

 

 

 

 

 

Paul Walker

 

 

 

あの頃

この世界は残酷だった

そして

とても美しかった

 

永遠に変わらない

その事実に

未熟だった私は気づかなかった

もちろん

未熟だった貴方も

 

そして

再び路上で

 

 

 

 

 

例えば

私は衛星となり

その周回軌道上から

遥か彼方の貴方を見ている

そんな醒める事のない夢

 

ある時は

大勢の友人達に囲まれていた

そして

幸せそうに笑う貴方

 

ある時は

優しく笑う人が佇んでいた

それは 

涙を見せる貴方の隣に

 

時々は貴方の事を見失なったが

久々に見つけた貴方は

家族と呼ばれるもの中に

居場所を見つけ

家庭と呼ばれるものを

築いていた

 

私はと言えば

この果てない広大な空間に

暗闇と言う恐怖に

ただただ打ちひしがれている

そして

途方に暮れている

かと言って

残された時間も少ない

そんな風に感じている

 

それにしても

此処は酷く寒い

凍てつく大気は

まるで意思を持つかのように

全身にまとわりつく

 

 

 

例えば

水の中のグラジオラスのように

永遠の時間を漂ったとしても

それは多分

漆黒の中にあって

何光年か先に見える

ただ一つの光

それを目印に

 

それを目印に

私は周回軌道上を離れ

貴方の元へ還るだろう

どうやら

今がその時のようだ

 

重力に惹かれた私の魂は

青白い炎を纏いながら

降下を始める

そうして

私の全ては

消滅してゆく

ゆっくりと

だが

確実に

 

身体の至るところが

焼けているのを感じる

肉体を形成している物質は

すでに消滅しているのだろう

だけど

意識だけは

はっきりとした輪郭を形成していて

貴方に会う為に

その為に

重力に惹かれていった

それに

この状態は

思ったよりも

ずいぶん心地が良い

そしてまた

貴方の事を思い出す

 

 

 

 

 

 

さよならの言葉は無しか

 

と聞かれれば

なんて言えばいいのかな

 

私は貴方と同じように

誰かを愛する事が

出来ただろうか

 

そう答えたなら

きっと

貴方は

 

 

 

 

さよならの言葉は無しか

 

と聞かれれば

なんて言えばいいのかな

 

この世界は残酷だ

そして

とても美しい

 

そう答えたなら

きっと

貴方は

笑ってくれるだろうか

 

 

 

だから

 

 


再び路上で

 

 

 

 

 

ポール・ウォーカーに捧ぐ

Lou Reed

 

 

それにしても

 

 

なんて完璧な一日なのだろう

今でも

こうして

君を想い

 

なんて完璧な一日なのだろう

この街で

再び君と

巡り逢えたなら

 

なんて完璧な一日なのだろう

そんな

あるはずの無い出来事に

想いを馳せる時

 

 

 

 

 

夜空を見上げていた

この部屋からはもう

昔のように

星は見えなかったが

 

例えば

水瓶座ペルセウス座

昔は見えたはずの秋の星

それらを見つけた

そんな気がしていた

少し冷たい風に

オリーブ色のカーディガンが

優しく揺らぐ

 

部屋に戻ると

The Human Leagueのレコードに

針を落とす

そして

ボトルに残ったchivasを

ストレートで一気に流し込む

それは

痛みを伴いながら喉を焼き

微かなカラメル臭を

鼻腔に漂わせた

その瞬間、また

君の事を思い出す事が出来た

 

酔った君が

僕の側まで来る

少し虚ろな目をしながら

いつものように

慣れた手つきで

僕の下半身を露出させる

そして

露わになったペニスを

手で優しくしごきはじめ

舌を絡めるように

僕に口づけをした

それから

ペニスが充分に大きくなった事を確認すると

生暖かい口に含み

美味しい

と僅かに微笑みながら

何度も何度も

頭を前後に揺らした

 

酔い始めた僕は

それを思い出す

そして

いつものように

自分でペニスをしごきながら

射精をした

 

 

 

 

 

何もかもが

狂ってしまった

はじめての出会いは

もうずっと昔の事

それなりに上手くやって来た

やって来たつもりだった

危険な路とは知らなかったから

 

何もかもが

空想だったのかも

今はそんな風にも感じる

それぐらいの時は

いつの間にか

経っているのだから

最初から

危険な道を歩いていた

そんな二人

 

 

 

 

 

 

 

疲れ果てた僕は

夢を見ない

 

そんな

 

完璧な一日

 

 

 

 

死んでも

魂の還る場所は無い

 

それも

 

完璧な一日

 

 

 

 

僕は待ち続けた

ショットガンを口に咥えたままで

 

それが

 

完璧な一日

 

 

 

 

その後に訪れるのは

 

きっと

 

永遠の静寂

 

それでも尚

 

僕にとっては

 

完璧な一日

 

 

 

 

君がもし

今でも

君の言う

危険な路を歩いているのならば

 

 

 

 

 

 

 

ルー・リードに捧ぐ

アベフトシ

 

 

 

 

赤みのかかった

月が昇る時

これで最後だと

僕は聞かされる

 

 

 

 

 

 

真夏の朝

激しい雨が降り続く

だけど

その日の午後には

強烈に暑くなった

 

まだ時間に余裕がある

浅煎りの珈琲を飲み

煙草を巻く

そして

これから会う

君の事を想った

 

ブルーのアイスキャンディ

蟻が群がっている

公園のベンチに捨てられたまま

無惨に溶け出し

 

しばし

視線を君の口元へ

想像していたのはそう

そのアイスキャンディを頬張る君

口に入ってくる蟻を

気にも留めずに

美味しそうに口に含んだ

 

 

あぁ、何て美しいのだろう

君は

僕だけに

それを

見せてくれる

 

あぁ、何て歪なのだろう

君は

僕だけに

それを

教えてくれる

 

 

 

 

 

 

乾きはじめた水溜まり

木々から立ち昇る水蒸気の匂い

レコードを聞こう

さっき買ったばかりの

もちろん

二人で

シャワーを浴びてから

 

黒いフェイクレザーのソファ

君は一瞬

何かを思い出したかのように笑う

そして

器用な手つきで

静かに露出させた

僕の下半身

 

隆起した硬い男性器

無駄の無い所作で口に含む

口元から伝い落ちる唾液

時々

僕と目を合わせながら君は

ゆっくりと

優しく

頭を上下に動かし始めた

 

小刻みに揺れる

しなやかな髪

それを優しく撫でる

大量の精液

そのほとんどを

君は口の中で受け止め

また一瞬

何かを思い出したかのように

笑った

 

 

あぁ、何て完璧なんだろう

君は

僕だけに

いや

他の誰かにも

そうやって

 

あぁ、何て屈辱なんだろう

君は

僕だけの

いや

他の誰かの

オモチャ

 


それでも

レコードはまだ4曲目の途中で

世界の終わりについて歌い続ける

 

身悶えるように

赤みのかかった

カッティングギターの音色

それが

やけに耳心地よかった

 

 

 

 

 

 

君は

いつものように

パンを焼き

紅茶を飲む

そうやって

何事も無かったかのように

何かを待ち焦がれている

 

そして

 

相も変わらず

何かが二人を見ている

再び

薄暗い部屋に

君の吐息だけが響く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


世界の終わり

それは

君が去った事なのだと

赤みのかかった月を見ながら

僕は静かに悟った

 


それから何度も

あの時と

同じ季節がやって来て

その度に僕は

君の事を思い出し

やわらかな後悔をする

 

 

 

 


朝から降る雨は

暫く止みそうにない

レコードはもう4曲目の途中で

聞き覚えのあるギターの音が

薄暗い部屋に

響いていた

 

 

 

 

 

 

アベフトシに捧ぐ

Yutaka Ozaki

 

裁くのが

君という

神ならば

 

 

 

 

 

そう

思えば

あの頃の僕らは

ただただ怠惰で時を過ごしていた

それは桜が散り始める季節まで続き

やがて

夏が来る頃

君は

僕の前から姿を消した

 

その頃の僕らは

毎日のように

疲れ果てた脳を

大量のアルコールで溶かし

手で巻いた煙草を吸いながら

The Doorsのレコードを聴き

そして

古いアメリカ映画の話に夢中になった

 

明け方近くなると

僕らは全裸のまま狭いベッドに潜り込んだ

後から君の白く小さな背中を抱きしめ

うっすらと汗ばんだ細い首筋にキスをすると

アルコールの混ざった小さな吐息が漏れた

 

君は自らの手で僕の固くなった男性器を

湿り気を帯び始めた女性器に導くと

更に奥まで入るように実に器用に姿勢をずらし

それから静かにゆっくりと腰を動かし始めた

粘膜同士が擦れ合う卑猥な音と共に

ドラッグにも似た快感が身体中を駆け巡るのに

そう時間はかからなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

裁くのは

君という

神だから

 

 

 

 

 

あれから僕は

昨夜見た

夢の続きを見るように

4時間もの間

地下鉄の風に吹上げられていた

 

これが現実ならば

だとしたら

何を奪い

そして

何を奪われるのか

少し分かった気がした

 

 

 

あれから君は

あまりにも

曝け出された毎日の中で

ただ街灯にもたれていた

 

優しさにも似たrock'n roll

踏み潰された空き缶

でもやっぱり

何もかも

元のままに見え

 

 

 

 

 

 

 


街の何処かで

誰かのクラクションと

街路樹たちの歌が聴える

 

 

 

 

抱きしめて

愛してる

抱きしめていたい

 

それは

足音に降り注ぐ心模様のように

 

 

 

 

抱きしめて

愛してる

抱きしめていたい

 

最後まで

愛を囁いている

 

 

 

 

抱きしめて

愛してる

抱きしめていたい

 

つかまえて

街路樹たちの歌を

 

 

 

 

抱きしめて

愛してる

抱きしめていたい

 

壁の上

2人

影並べて

 

 

 

 

抱きしめて

愛してる

抱きしめていたい

 

それだけなのに

 

ただ

 

それだけでよかったはずなのに

 

 

 

 

 

尾崎豊に捧ぐ