Chester Bennington

妻の掌が僕の髪の毛を

どこまでも優しく優しく撫でてくれ

銀色に耀く鋏の

心地が良く軽い音と共に

いつの間にか長く伸びてしまっていた

髪の毛を切る

 

それを傍で見ている

まだ乳白色の年頃の幼い娘は

二人は一体、何をしているのかと

とても不思議そうな表情を浮かべながらも

健気にその様子をじーっと見ていた

 

次は君の番だからねと

妻が娘の頭を僕にする時より更に

優しく、優しく撫でていた

 

 

 

 

埃の溜まった細道で

淡い思い出だけを残して

錆だらけの曲がった道標は

いつも間にか朽ち果てて

 

故郷を煙らせる

何処からか降る天泣

心の琴線に触れたら

水平線へと去って

 

 

 

火の気の無い部屋を残す我ら

分かれ道だったとしても

後ろを降り向かないでいよう

 

それでも

 

火の気の無い部屋を残す我ら

もう二度と帰れない場所から

最初へ戻りたいと願う

 

 

結局、最後は

最初へ戻りたいと願う

 

 

結局、最後に

最初へ戻りたいと

そう願った

 

 

 

 

 

チェスター・ベニントンに捧ぐ