愚礼吐似多

この場所に来るのは何度目だろうか

 

例える事の出来ない色をした

そんな一組のテーブルと椅子

それが中央に置いてあるだけの

灰色をした無機質な四角い部屋

 

無音とも思われたが

よく耳を澄ましてみると

弱々しく明滅を繰り返す

蛍光灯だけが音を立てていた

 

そこでは

死んだ魚のような目をした自分が

きっと何も写さないその目線を

虚な空間に漂わせている

 

もうどれくらいの時間が経過したのか

そんな事を考え

何故か遠い昔を想った

 

唐突に誰かが僕の名前を呼ぶ声が聞こえた

そんな気がした

 

 

目が覚めると何故か泣いていた

悲しい理由など無いはずなのに

とうの昔に弱さを認めた

そんな者にしか流せない涙

 

そして

これからも永遠に繰り返す

何度でも生きては死んで

生まれ変わった喜びを感じながらも

死んで行く恐怖と苦痛を感じて

無機質な四角い部屋

そこは大阪南港

 

しっかり歩けるだろうか

それだけが気掛かりだったが

心配は要らない

魔界から蘇った僕は

まるで別人なのだから

いや

別人では無い

それは

永遠のファンタジア

愚礼吐似多