Steve Clark

 

 


鼓動

 

心臓には今でも

何かに噛みつかれたような跡が

深くはっきりと残っており

その腐りかけの

グロテスクな傷口の痛みだけが

今でも尚

君の事を思い出させた

 

その傷口から

次々と生み落とされる

得体の知れない快楽と苦痛

制御する事の出来ない

それらはまるで

屍に群がる無数の醜い蟲のように

僕の内側で育ち

蠢いていた

 

 

 

僕が

愛について

語る資格など無い

 

勿論

君にも

その資格は無い

 

僕は

愛について

何も知らない

 

勿論

君も

恐らく

何も知らない

 

あれから

随分と月日が流れた

けれど

相変わらず

僕にはその資格が無い

果たして

君にはあるだろうか

 

 

 

 

 

1月

 

君が姿を消したのは

僕の内側で蠢いてた沢山の蟲達が

いつの間にか

美しい羽を生やし

真冬の空へ向かって

いっせいに飛び立って行った頃

 

全て忘れ去られてしまうのだろうか

思い出なんてものは

きっとそのうち浄化される

ましてや

君の顔、声色、美しい裸体

それさえも

全て

 

 

 

僕はただ

苛立った

君の視線の冷たさに

君の素肌の温もりに

 

君はただ

嘆いた

手に入れる為には

捨てねばならぬ事を

 

僕はずっと

覗いていた

君の内側にある

闇の世界を

子宮から外の世界を

 

君はずっと

探していた

名前も知らない鳥達を

僕以外の誰かを

 

それでも僕は

あの時

確かに君の事を

 

愛は噛み付くのよ

とても

ヒステリックに

 

そう言っていた

君の事を

 

 

 

 

 

あの頃の僕らは

あまりにも弱く

そして

脆かった

 

それを

隠すかのように

僕らは会うたびに

SEXをしたのだけれど

それは

君にとって

少しの心の平穏と

安らぎを

与える事が出来ただろうか

 

 

 

 

 

愛とは

噛みつくもの

とてもヒステリックに

 

それはドラッグにも似た

快楽と苦痛を

与えてくれると言う

 

愛とは

噛みつくもの

とてもヒステリックに

 

それは秘密ではない

理解するものではなく

感じるもの

 

 

 

 

いつか

傷が癒えたのなら

部屋の隅に花でも飾ろうか

誰かの為ではなく

今度は

自分の為に

 

そして

 

真冬の空に飛び立って行った

醜い蟲達の為に

 

美しい羽を生やした

醜い蟲達の為に

 

 

 

 

 

ティーブ・クラークに捧ぐ