Prince Rogers Nelson

儚く散っている

それは誰かの想いか

それとも

 

ならば

その景色に

その速度に

音が存在するならば

僕には聞こえただろうか

 

 

 

もう行かなくちゃ

悪い人じゃないんだけど

誰かの変わりには決してなれない

言っておくけど

君の事が好きな訳じゃなく

ましてや

愛している訳でもなく

ただセックスがしたかっただけだから

それに

君の自慢の華奢な身体ってやつに

珈琲に入れる砂糖くらいほんの少し

興味があっただけ

それよりも

今は煙草さえあれば

他に何も要らない感じだし

悪いけど先に行くよ

もうここには用は無い

そう言って

昨夜からかかりっぱなしの

St.Elmos Fireのレコードから針を上げる

 

 

 

急に降り出した大粒の雨は

僕が思うよりもずっと早く

瞬く間に街を銀色に染め

アスファルトと混ざりあいながら

その独特なにおいを辺りに漂わせた

 

僅かに残った桜の花は

とうとうその勢いに耐えきれなくなり

まるで傘を持たない迷子のように

不規則に揺れながら

秒速5センチメートル

まるで誰かの想いのように

静かに儚く銀色の地面に散った

 

 

 

 


見惚れていた

赤いコルベット

そして

そこから降り立ったある人物に

 

彼女は濡れる事を微塵も気にする素振りを見せずに颯爽と歩き出すと、雨宿りしている僕の横にある自動販売機でマルボロメンソールを買う

そして

輝いているもの全てが黄金じゃないでしょ?

とでも言いたげな

そんな目をしながら

僕に微笑みかける

 

だが

次の瞬間

君は去る

赤いコルベットと共に

 

 

 


いつの間にか

雨は上がり

輝きを取り戻した太陽は

再び君を照らす為のみ

この街を今度は金色に染めた

 

彼女は美しさのそのほとんどを持っていた

 

想いは

たどり着かずに

紫色の雨となって

再び君を探す

 

 

 

 

プリンスに捧ぐ