Beautiful World

何処からとも無く

浮かび上がっては消えていく

ピンクのシャンパンの泡のように

繊細できめ細かく美しい君の身体を

ドブに浮かぶ骨の露出した鼠の死体のように

薄汚いままの僕が抱いていた

何度も何度も

夢中になって

 

一日中セックスだけに没頭し

熟れた果実の周りだけを食べ尽くしていくように

僕らはただ

綺麗な部分だけを

何の疑いも持たずに

見続けそして味わい尽くした

 

君は知っていたか

その時からすでに

僕らの中心にある物は

酷い発酵臭を漂わせ灰色の糸を引きながら

グチュグチュと厭な音を立てて

腐り始めていたとゆう事を

 

きっと綺麗事だけでもよかったのかも知れない

だって

君が言うには

『この世界は美しい』

僕にとっては

忘却の彼方の

『美しい世界』

そっと冷たくなっていく

美しい世界

 

 

 

旦那にプレゼントしてもらったとゆう

その真新しい一眼レフで

君は見事なまでに

波打ち際から羽ばたこうとする名前の知らない鳥の姿や

空と海の境界線に存在する表現しきれない色合いの数々を

あまりにも自然な動作でフィルムに収めて行った

 

君は知らなかったのか

あの時僕は

頭痛薬を一つ飲み込んで

一度たりともシャッターを切らなかったとゆう事を

この世界の中で美しいと思えるのは君だけだったし

僕が目を奪われたのはいつだって君だけで

それ以外は君が言う程

美しく感じられなくなっていたから

 

 

砂浜にしゃがみ込み

こちらを振り向く

その瞬間の君は

一体どんな顔をしていたのだろう

黒くて長いその美しい髪が

風に吹かれてその表情を隠したけれど

 

君は笑っていただろうか

今でも時々そんな事を思い出したりするけれど

それでも

やはり君は笑っていただろうか

 

だって

君が言うには

『この世界は美しい』

僕にとっては

忘却の彼方の

『美しい世界』

そっと冷たくなっていく

美しい世界