Keith Flint

もうダメかも知れないな.

死んでしまいたい

いや

死にたくはない

もう少し正確に言えば

消えて無くなりたいとゆう

類いの消滅を待ち望んでいる

そう

この世からの

完全な消滅を

 


そっと裸電球の明かりが消える時のように

行方不明のあの娘みたく

誰にも知られないように

ひっそりと

静かにその時が来るのを待ち続け

 


その後に待ち構える闇と静寂を

支配しているのは何か

恐怖心か

それとも

快楽か

果たして

 

 

 

今にも爆発しそうなjerichoを

お前に突き刺さしてやりたい

後ろから乱暴に

何度も何度も腰を打ちつけながら

長くて綺麗な髪を掴みあげ

そのか細い首に手を回す

そして悲痛さに喉を

震わせながらサイコな叫び声を

聞かせてくれないか

 


真っ赤に燃え盛るspitfireを

どうしようも無く淫らな

お前の口に突っ込んでやりたい

この世界の全てを

吸いこんで

全てを

吐き出すように

その苦しみに苦悶の表情を

その快楽に白目を剥くところを

見せてはくれまいか

 

 

 

 


この場所では

 


俺こそが王であり

お前は下僕

 


俺はパンクの扇動者で

お前はトラブルの元

 


さぁ来いよ

お前を試しやる

 

 

 

 


俺は闇の支配者で

お前は静寂の奴隷

 


俺はお前の痛み

お前は俺の痛み

 


ピッチを上げろ、ビッチは俺だ

ゲームはまだ始まったばかり

 


俺は絶対なる福音

お前は何かの前兆

 


俺は着火剤

お前は火打ち石

 


俺はねじ曲がったfirestarter

お前は狂信的なflint

 

 

 

 

 

キース・フリント に捧ぐ

Sid Vicious

その日は冬にしては珍しく

窓際に柔らかな日差しが差し込むような暖かい朝で

それは子宮の中に居た頃も

こんな暖かさに包み込まれていたのだろうかと

そんな想像をさせた

死ぬにはもってこいの日

 

 

とにかく

もう一度だけ

最後にもう一度だけ

アレをキメて

どこまでも崇く昇れば

辿り着けるだろうか

記憶の中にだけ存在する聖地

そんな場所へ

スプーンと注射器

茶色い砂糖みたいな

そんなものに願いを込めて

 

 

 

震える小さな背中は

思い出のレコードと共に

焼かれながら朽ち果てて行く家を

ただ呆然と見続ける事しか出来なかった

 

真冬にセーターを編んでくれたおばあちゃんの

今では誰も寄り付かなくなった

薬品の匂いで満ちた

灰色の病室

 

赤錆で薄汚れた玄関ドアと

僕の世界をすっかり変えてしまった

力なく笑いながら去って行く

君の愛くるしい残り香

 

人目を避ける為だけに潜り混んだベッド

僕らはただ

快楽だけを貪りあい

体液の染み込んだ白いシーツだけが残った

チェルシーホテルの部屋

 

 

 

 

 

どうやって君の事を誘惑して

街の外に連れ出そうか

そんな日々も突然に終わりを告げ

先に逝ってしまった君と交わした約束

そして

死の取り決め

 

でも

そのままでいい

ありのままが

それこそが何よりも尊い

だから

レザーのジャケットとブーツを死装束に

そして

Gimme A Fix

と一言添えてくれまいか

 

 

 

さて

最後の時がもう近い

振り返れば色々あったが

それが自分の道だった

少しくらい後悔はあるさ

別に話す程の事でも無いがね

 

 

 

 

ここは不思議だ

居心地が凄くいい

透明な液体に満たされたこの空間は

まるで冬の朝の柔らかな光みたいに暖かい

目はまだ何かを捉える事が出来ないが

遠くから

遥か遠くの方から

名前を呼ばれた気がした

自分で歩き始めるには時期がまだ早い

だから

もう少し

ここに居させてもらうとするかね

 

 

 

 

 

 

シド・ヴィシャス  に捧ぐ

David Bowie

星々が自らの意志を持つように

その輝きで夜空を紅く染め上げる

戦場のメリークリスマスが過ぎた頃に

 

 

 


シリウスプロキオン、ペテルギウス

冬の大三角が手に取れる程の距離にあるような

そんな真冬の夜空を見上げている

 

罪を犯す事でしか生きられなかった僕は

もう何度、こうして星空を見た事だろう

そう想うと悲しくないのに何故か涙が溢れた

美しさの琴線に触れたように

とめどなく流れ出たそれは

僕の頬を伝い地面に

真っ黒い染みを作った

 

隣に君が居たらいいのに

でももう忘れているだろう

それくらいの時間はとっくに経って

しまっているのだから

今頃、異国の地で幸せに暮らしているのなら

それはそれで

君の人生が幸せに満ちているようにと

流れたばかりの星に願った

 

今すぐにでもあの場所に行けたらいいのに

それならばまずは月の近く

ベルベット色に光る火星にでも行ってみようか

ねぇ、ジギースターダスト

もしもまだそちら側に居るのなら

僕の願いを叶えてくれないか

 

 

 

 

あの日からどれくらいの日々が過ぎたのだろう

もう長いこと僕の首から下は地中に埋められ

今じゃすっかりその身体のほとんどが

土に還ってしまっている

それでもその瞳だけは

遥か遠い場所

宇宙の果てとも呼ばれるその場合に

静かに佇んでいるはずの

たった一つの黒い星を探し続ける

そしてまた

戦場のメリークリスマスが過ぎた頃

この場所で会おう

 

 

 

何処からか迷い込んで来た

限りなく白に近い青色の羽を持った

一匹の蛾が

そっと

寄り添うように

僕の額に止まっていた

 

 

 

 

デヴィッド・ボウイ に捧ぐ

George Michael

今年もまた何処からともなく流れ始めるその歌は

何の違和感も無く静かにゆっくりとこの街にも馴染んで行く

魂の救済を求める弱者の為の

そんな彼の歌

 

ジョン、残念だけど

戦争は終わりそうにないよ

どれだけ皆がそれを望んだとしてもね

 

その聞き慣れたフレーズと運命共同体となって

生暖かい風が吹きだす地下鉄の入り口へと吸い込まれて行った僕は

ある広告に写る男に目を奪われ足を踏み出せないでいた

 

faithという文字

そして

十字架のピアスを付け無精髭を生やし革ジャンを着ている金髪の男

俯いているせいか、その表情までは分からなかったが

お前には信念はあるか?

そう問われている

そんな気がしていたから

 

僕はさっき買ったばかりの

ゴムで出来た中国製の小さな観葉植物を彼女に届けに行くところ

そして

彼女はきっと

彼女だけはきっと

溜め息混じりに緑色の安っぽいプラスチックの水差しでそいつに水を与えるだろう

 

列車は僕を乗せ実に単調なリズムを刻みながら走り続ける

とても幸せそうな顔をしながら停車駅で乗り込んで来た男が

そのリズムを掻き消し静寂を残した

プレゼントであろう外国製の椅子を腕に抱えながら

 

静寂が終わると列車は再び単調なリズムを刻み走り始めた

どうやら夢を見ていたようだ

広告の男も、椅子を抱えた男も

まるで存在しなかったかのように

 

 

 

 

 

 

 

車内で流れるジザメリの just like honey が気怠い

そして高速の渋滞は果てしなく長い列となり

真っ赤なテールランプが遥か向こうの街の出口まで続く

 

ベイブリッジが見える頃

車のラジオは海外の偉大なアーティストが亡くなった事を伝え

それから

One More Try

という曲をかけた

 

maybe just one more try

それも素敵かな

 

だって

今でもあの椅子が届くのを待ち焦がれている人がいて

それに

僕が居なくなった今でも

彼女はきっと水を与えているのだから

 

maybe just one more try

聖なる夜に

 

 

 

 

僕らはまだ旅の途中で

助手席で寝息を立てている君は一体どんな夢を見ているのだろう

それとも

あの日、問われた信念が

君を殺す事

だとするならば

だとするならば、君は永遠に夢を見ることは無いのだろうか

 

心の中が冷たいよ

それでも多分

もう一度だけトライしてみるよ

 

そして僕は

そっと溜め息をついた

 

 

 

 

ジョージ・マイケル に捧ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Freddie Mercury

君は最後にあの交差点で

綺麗な琥珀のような目をしながら

僕の耳元でそっと何かを囁き

その言葉を僕は今でも探している

 

僕らの終わりは余りにも突然で呆気無かった

世間から許されない関係とゆう事以外には概ね順調だったと思う

それでも僕の内なる完璧な狂気を呼び起こすのにはまだ何かが足りなかった

そして

その実感も無いままにただ時が過ぎて行く

 

これは現実か?

それとも

ファンタジーか?

 

 

 

ママ以外にこの話をするのは君が初めてなんだけどさ

遠い昔に拳銃で人を殺してしまってね

でも何て言うのかな

あれはアクシデントみたいなものだったんだよね

好奇心ってやつさ

実に単純だろう?

君にも昔はそんなものがあっただろうよ

Beelzebubに追いかけられたりもしたけどさ

Scaramoucheとは素敵なファンダンゴを踊ったよ

僕なりに赦されようと頑張って来た訳さ

貧乏だったからね

ただふらふらと生きていたいだけの僕だったのさ

最近はあの変な歌も聞こえなくなったし

多分、僕は赦されたんじゃないかな?

だからそこの可愛らしい戸棚に隠してある

Moet et chandonで乾杯

なんてどうだろう

 

これが現実か

それとも

ファンタジー

 

 

 

 

ところで

思い出したよ

今、はっきりと

 

 

どのみち風は吹く

 

 

確かあの交差点で

最後に君はそう言った

 

 

 

 

どのみち風は吹く

Bohemian な Rhapsodyのように

それは完璧な狂気を帯びながら

 

今でも僕らには

その風は吹いているだろうか

そして

これからもずっと

 

You  Are  My  Best  Freind

 

 

 

 

 

 

フレディ・マーキュリーに捧ぐ

 

Beautiful World

何処からとも無く

浮かび上がっては消えていく

ピンクのシャンパンの泡のように

繊細できめ細かく美しい君の身体を

ドブに浮かぶ骨の露出した鼠の死体のように

薄汚いままの僕が抱いていた

何度も何度も

夢中になって

 

一日中セックスだけに没頭し

熟れた果実の周りだけを食べ尽くしていくように

僕らはただ

綺麗な部分だけを

何の疑いも持たずに

見続けそして味わい尽くした

 

君は知っていたか

その時からすでに

僕らの中心にある物は

酷い発酵臭を漂わせ灰色の糸を引きながら

グチュグチュと厭な音を立てて

腐り始めていたとゆう事を

 

きっと綺麗事だけでもよかったのかも知れない

だって

君が言うには

『この世界は美しい』

僕にとっては

忘却の彼方の

『美しい世界』

そっと冷たくなっていく

美しい世界

 

 

 

旦那にプレゼントしてもらったとゆう

その真新しい一眼レフで

君は見事なまでに

波打ち際から羽ばたこうとする名前の知らない鳥の姿や

空と海の境界線に存在する表現しきれない色合いの数々を

あまりにも自然な動作でフィルムに収めて行った

 

君は知らなかったのか

あの時僕は

頭痛薬を一つ飲み込んで

一度たりともシャッターを切らなかったとゆう事を

この世界の中で美しいと思えるのは君だけだったし

僕が目を奪われたのはいつだって君だけで

それ以外は君が言う程

美しく感じられなくなっていたから

 

 

砂浜にしゃがみ込み

こちらを振り向く

その瞬間の君は

一体どんな顔をしていたのだろう

黒くて長いその美しい髪が

風に吹かれてその表情を隠したけれど

 

君は笑っていただろうか

今でも時々そんな事を思い出したりするけれど

それでも

やはり君は笑っていただろうか

 

だって

君が言うには

『この世界は美しい』

僕にとっては

忘却の彼方の

『美しい世界』

そっと冷たくなっていく

美しい世界

 

 

 

 

 

 

Edward Van Halen

そう

そこは俺のオアシス

場末のストリップ劇場

俺が天国への階段と呼んでいる

薄汚れてやけに細長く勾配のきつい階段を上がったところにそれはある

 

入り口の小さなTVモニターには

『先生に熱くなっちまった』

なんて歌っている古いロックのPVが流れ

まるで

少年のままの笑顔でギターを弾いている長髪の男が映っていた

 

そしてその男は

俺が踊り子達に熱を上げている事を見透かしているかのごとく

実に楽しそうにギターを弾いているのだった

 

 

 

踊り子の青白い肢体は

霧のようにしっとりとした透明な汗によって

その肉体をより妖艶に見せ

俺の熱量さえも奪いながら美しく光っている

せめて今夜くらい

一緒に踊れたなら

朝が来るまで

いや

それだけじゃ到底満足など出来るはずも無く

 

 

5150

そうコードネームで呼ばれる俺には

今夜はまだ片付けなきゃならん厄介な仕事が残っており

それはまるで

悪魔と走るようなものだから

Holy Warsを聴きながら第三京浜を爆走し

今も

The Unforgivenのように彷徨っているけれど

それでも

Bitter Sweet Symponeyで人混みを歩き

その時が来たら

Major Tomのように帰還しないとゆう選択肢を選んでしまう俺だから

今すぐに

Jampして

何処か遠い場所へ行きたいと願った

そうだ

Panamaだ

Panamaにでも行けたらいいのに

今この瞬間に

 

 

 

 

ところで

 

 

 

あの長髪の男は

今でもまだ何処か遠い場所で

ギターを弾いているのだろうか

まるで

少年のような笑顔を見せながら

 

 

確か

Eddy  

そう呼ばれてたっけ

 

そして

 

俺の上には

AM 3:00の青白い踊り子の肌のような美しい月が出ている

 

 

 

 

エドワード・ヴァン・ヘイレンに捧ぐ