吹けよ風 呼べよ嵐

あの頃の僕は

もっと別の何か

いや

何者か

いわゆるキャラというやつを演じていたのだった

別人格になる必要性と理由

そんなに多くは無いが

それは確かにあったはずで

 

まだまだ恨まれているだろうか

まだまだ

まだまだ

 

本当に悪い人間はヒールになれないと言う

では僕は良い人間か

そんな事などあるはずもなく

僕の目の奥底は汚れきっている

今も

 

 

雨混じりの風が強く吹き始めている

それが湿り気を帯びて空気が重い

多分、嵐が来るのだろう

 

僕には賭ける事のできる物なんて何も無いのだけれど

隣に居る貴方に素直な気持ちを言葉にする事は

今は躊躇われるから

色々と考えてみた

せめてだね

この色褪せたチャンピオンベルトを賭けるよ

勿論、全てが上手く行くって方にね

 

でも何故だろう

すごく嫌な予感がするんだ

風はやがて嵐になり絶望と恐怖に陥れる

それとともに何かが

何かが来る

そんな予感

 

ここは寒過ぎるし、煙草もあと僅か

珍しく話をし過ぎたみたいだね

酔ってもいないのに

 

急いでコートを着て部屋を出よう

 

黒い呪術師

彼が来てしまう前に

そして

吹けよ風 呼べよ嵐が聞こえて来る前に

 

じゃないと僕らの賭けなんて

何の意味も持たなくなるからさ